怒涛の一日

誕生!

緊迫(?)の出産ドキュメントです。
夜明け前から何度もお腹の「張り」があり、痛くて目が覚めること数回。でもマヌケなことに数日前に私を苦しめた前駆陣痛と同じレベルの痛み(生理痛がひどい感じ)なので「また同じだろ」と思い込む。普通に起きて弁当をつくり、オットに持たせる。冗談で「コレが本当の陣痛だったらねー、アハハ」と笑い合ったが、後ほど、冗談で済まなかったことが判明。
10時30分ころ「今回も長く痛みが続くなー」と思いつつ、いつも通り検診のため病院へ向かう。お腹にセンサーをペタペタ貼って胎児の脈拍を調べたり、陣痛の間隔を測ったりできるNSTという検査をしていた際、いつもとは違う波形が。グラフを確認しに来た助産師さんから「今日は荷物持ってきてますか?」「ご家族はすぐにこちらに来られそうですか?」と質問され、何となくただ事ではない雰囲気を察知。実際、この時点で入院の目安となる約8分間隔の陣痛がきていたらしい。自分、にぶすぎます。
続いて先生による診察。すると、先生は苦笑いで「もう5,6割開いていますね。数時間後には出産になりますので、このまま入院して下さい」と一言。・・・えっ、そうなんですかっ! ただの検診だと思って着の身着のままの状態なので「荷物を取りに一旦家へ戻って引き返してきても大丈夫ですか」と尋ねたところ、「それはやめておいた方が良い」とのこと。ひょえー。
慌ててオットに「午後には産まれそうらしい」と連絡をいれる。そしてオットから実家方面へ伝えてもらうこととし、入院グッズは1時間半後くらいに持って来てもらえることになった。そして、ちょうど昼時だったので、案内された病室には昼ごはんが出る。何だか狐につままれたような気持で、ことの重大性がまだ飲み込めないまま、初めての病院食をモグモグといただく。三色ご飯、美味しかったです。

とりあえずまだ痛みがそれほどではないので、落ち着いて頭の中で状況を整理してみる。まず念頭に浮かぶのは、今日ちょうど都合よく病院に来る予定になっていて良かった、ということ。もし昨日や明日にこの状態になっていたら、私のことだから、不思議に思いつつも、ギリギリまで痛みをやり過ごしてしまい大騒ぎになっていたに違いない。おーこわっ。そして結局、当初予想通り「歩いて入院」となりました。そして周囲から「陣痛が分からなかった女」の烙印が押されること決定。
ちょっと血圧が高めになっていて、助産師さんがたびたび数値を確かめにくる。「ひょっとしたら日が暮れる前に産まれちゃうかも」と思われていたが、5分間隔からなかなか短くならず、時折くる波を何とかやり過ごしていたら、あっという間に18時を過ぎてしまう。
助産師さんが夜間担当の方に交替。「すごくいきみたくなる気分が来るまで、分娩室には入れません」と言い渡される。この時点でまだそういう状態にはなっておらず、一旦助産師さんは引き上げてしまう。とにかく早くスッキリしたくて、お産を進ませるために「歩き回る」作戦を決行。ウロウロと檻の中の獣のように部屋の中(←ちなみに個室です)を行ったり来たり。すると何が幸いしたのか怒涛のように陣痛の間隔が狭まり、一気に「いきみたい」感覚に襲われる。うわー、助けてー!! 「いきみたくても絶対にいきんではダメ」という、噂に聞く妊婦が最もつらいという時間帯がやってきて、本能と理性の狭間で難破寸前の小舟のよう。陣痛の波を逃すことが難しくて、ますます獣のようにウロウロとしてしまう。次に助産師さんが来る予定の時間まで我慢することができず、オットにナースコールをお願いする。幸い「まだまだね」とはねつけられること無く、助産師さんもビックリの進行具合だったらしく、すぐに分娩室へ連れて行ってもらえることに。よ、良かった・・・。しかし本番はこれからなのです。
結局なし崩し的に「立会い分娩」に参加させられることになったオット。どうやら「その場の雰囲気」で立会いか否か決めても良いらしく、その辺りはかなりアバウトな病院なのです。出産の経過について何の予備知識もないのにこの人大丈夫だろうか、と心配になりつつも、すでにこちらも余裕なし。壮絶な陣痛の波が来るたびに手を思いきり握り、さらには「左足がつりそうだ!」と言って、ふくらはぎを揉ませる。そして20時半過ぎ、先生もやって来て、いよいよ大詰めとなる最終局面。2回ほどの陣痛で、何かがニョロッと出た感覚。しかし、出てきた子供が予想以上に小さかったらしく、周囲に戸惑いの空気が流れていて、産まれたのかどうなのか一瞬分からず。しばらくすると元気な泣き声が聞こえてきて、ホッと一安心。お、終ったのかな・・・。その後、テキパキと出産直後の処置が進められたのだけれど、唯一冷静なオットの質問(「あのー、ところで・・・」)により、ようやく「女の子」という情報がもたらされる。「感動的」な出産シーンとはお世辞にもいえず。
結局、なんと2千グラムを下回る小ささだったため、念のため、別の専門的な病院へムスメは移されることに。予想できない展開に唖然となるも、元気の良い泣き声に気持が救われ、産後の興奮もあってか、すぐにポジティブ思考を取り戻す。結果オーライ人間、ここにあり。ムスメは身体を温める機械から離れられないため、声は聞こえるけれども顔を見ることができず。しばし分娩台の上に乗っかったまま、オットと二人、苦労を分かち合う。
電話をかけるためにその場を離れていた先生が「珍しく2軒目で見つかりました」と搬送先の病院を知らせてくれる。八王子にある小児病院らしい。八王子かぁ。でもこのご時世、巷で散々報道されているとおり、すぐに受け入れていただけでも本当にラッキーなことなのです。先生ありがとう!! 「すぐに向こうから救急車で迎えに来ます」とのこと。新生児専用車かつ保育器付きで、小児科の医師が同乗していらっしゃるそうです。なんとも心強い。
22時ころに救急車が到着。「休んでいても良いのよ」と助産師さんには言われたけれど、やはり心配なので点滴をつけたままヨロヨロと見送りに出る。慌しい中でほとんど顔を合わせられないまま、産まれたばかりのムスメとしばしのお別れ。スヤスヤとよく眠っている。元気に頑張るんだよ、と話しかける。そして転院手続きのために、すぐに向こうの病院に行かねばならないオットは、救急車には同乗させてもらえないようで「ここに来てください」と地図のプリントを一枚渡される。なんと電車と自分の足でこれから八王子に向かうことに。頑張れ、オット!! 結局、向こうの病院着が深夜で、全てが終って、タクシーをつかまえて帰宅したのは2時すぎだったとのこと。おつかれ様でした。